はじめに

明るくモダンなオフィスで、スマートカジュアルな服装をしてパソコンに向かい、意欲的な表情で自信を持って働く60代後半のプロフェッショナルな日本人男性。

「働きながら年金をもらうと、損をしてしまうのでは?」

これまで多くのシニア世代を悩ませてきたこの不安が、2026年の法改正によって大きく解消されることとなりました。在職老齢年金の支給停止基準がこれまでの「50万円」から「65万円」へと大幅に引き上げられたためです。

この記事では、働き損を防ぐ新制度の概要から、気になる増額分の振込日スケジュール、自宅に届く通知書のチェック方法まで、社会保険労務士の視点から分かりやすく解説します。

2026年法改正で何が変わる?在職老齢年金「65万円」引上げの概要

居心地の良い自宅のダイニングテーブルで、広げた通帳を手に取り、安心感と満足感に満ちた笑顔で見つめる高齢の日本人女性。

支給停止の基準が「50万円」から「65万円」へ大幅緩和

70歳未満の方が会社に就職し厚生年金保険に加入した場合や、70歳以上の方が厚生年金保険の適用事業所にお勤めになった場合には、老齢厚生年金の額と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。これを「在職老齢年金」といいます。

(日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」P13より引用)

これまでは合計額が月額50万円を超えると年金がカットされる「50万円の壁」が存在し、シニア層の就労意欲を阻む要因となっていました。しかし、2026年4月1日からはこの基準が「65万円」へと大幅に引き上げられます。少子高齢化による人手不足を背景に、シニア世代が収入を気にせず意欲的に働ける環境づくりを目指した歴史的な規制緩和といえます。

【村上社労士が解説】「給与+年金」がいくらなら全額もらえる?

具体的に、あなたの収入がいくらまでなら年金を全額受け取れるのでしょうか。

計算の対象となるのは、「総報酬月額相当額(毎月の標準報酬月額+過去1年間の賞与を12で割った額)」と「老齢厚生年金の月額(基本月額)」の合計です。2026年以降は、この2つの合計が月額65万円以内であれば、厚生年金が1円もカットされることなく全額支給されます。

たとえば、毎月の給与(賞与込み換算)が40万円、老齢厚生年金が月額15万円の場合、合計は55万円です。これまでは50万円を超えた5万円分の半額(2.5万円)が支給停止されていましたが、新制度では65万円以下に収まるため、15万円の年金を丸ごと受け取ることができます。

気になる「増額分」はいつ振り込まれる?振込日とスケジュール

現代的な日本の住宅の玄関先で、届いたばかりのハガキの通知内容を真剣な表情で慎重に確認するシニアの日本人男性。

法改正後の最初の振込日は「6月15日」

法改正によって支給停止が解除、または緩和されたことによる「増額分」は、一体いつ口座に振り込まれるのでしょうか。

日本の公的年金は、原則として偶数月の15日に、前月と前々月の2ヶ月分が支払われる仕組みになっています。2026年4月1日から施行される新しい在職老齢年金の基準は、4月分および5月分の年金から適用されます。したがって、法改正後のルールに基づき増額された最初の年金が振り込まれるのは、2026年6月15日となります。ご自身の通帳をぜひ確認してみてください。

手続きは必要?自動で増額される仕組み

「増額の恩恵を受けるためには、年金事務所に行って何か複雑な申請手続きをしなければならないのだろうか」と心配される方も多いかもしれません。

結論から申し上げますと、受給者側での個別の申請や手続きは一切不要です。勤務先の企業から日本年金機構へ提出されている毎月の標準報酬月額などのデータに基づき、国側のシステムで自動的に年金額の再計算(改定)が行われます。余計な書類提出の手間はなく、自動的に増額された金額が振り込まれますので、どうぞご安心ください。

改定の通知書はいつ届く?「年金振込通知書」のチェック方法

日の光が降り注ぐ都市の歩道橋の上で、明るい希望に満ちた笑顔で地平線を眺める、活気にあふれたスマートカジュアルな服装の日本人シニア男性。

通知書が自宅に届く時期と「見るべき項目」

年金額が実際に変更されたことを証明する「年金額改定通知書兼年金振込通知書」のハガキは、日本年金機構から2026年6月上旬頃(最初の振込日である6月15日の直前)に自宅へ届きます。

ハガキが届いたら、まずは「支給停止額」の欄をチェックしてください。これまでに比べて支給停止額が減っている、あるいは「0円」になっていれば、今回の65万円への引上げによる緩和措置が正しく適用された証拠です。同時に「差引支給額」が増えていることを確認し、6月15日の振込予定額と照らし合わせましょう。

通知が届かない・金額が合わない場合の確認先

万が一、6月に入ってもハガキが届かない場合や、印字されている支給額が事前のシミュレーションと違って合わないと感じた場合は、早めの確認が必要です。

まずは、お近くの年金事務所や「ねんきんダイヤル」へ問い合わせ、現在の登録状況を確認してください。また、会社の給与体系や賞与のタイミングによって計算が複雑になるケースもあります。もし「国の窓口の説明だけでは分かりにくい」「自分の働き方で本当に損をしていないか個別に診てほしい」という場合は、当「村上社会保険労務士事務所」のような専門家へお気軽にご相談ください。実務経験に基づき、最適な就労プランをご提案いたします。

結末(まとめ)

2026年の法改正による在職老齢年金の「65万円」への引上げは、働くシニアにとって追い風となる大きな転換期です。これにより、これまでの「働き損」を心配することなく、培ってきた経験やスキルを社会で存分に活かし、正当な報酬と年金を同時に受け取れる時代が到来しました。

最初の増額振込日は2026年6月15日です。これからの豊かなセカンドライフとキャリアを応援しております。