2023年4月1日から中小企業についても月60時間を超える法定時間外労働に対する割増賃金は、従来125%だったものが150%以上支払わねばならなくなりました。これは努力義務でなく、義務で罰則もあります。
(罰則は 6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金 )

この改正の趣旨は、割増賃金による事業者の負担を重くすることにより、健康リスクの増大する長時間労働を抑制することにあります。
大企業は2010年4月1日に施行され、中小企業は当分の間ということで猶予されていました。

中小企業に該当するかどうかは下記①または②を満たすかどうか企業単位で判断されます。
業種 ① 資本金の額または出資の総額 ② 常時使用する労働者数

業種 ① 資本金の額または出資の総額② 常時使用する労働者数
小売業小売業 5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
上記以外のその他の業種 3億円以下300人以下

法定労働時間は原則として、週40時間 1日8時間です。土日休みの会社で月曜から金曜まで1日8時間・週5日労働した後、土曜日に働くと通常の割増賃金は125%ですが、法定時間外労働が月60時間を超えた時点で150%となります。(日曜日が法定休日とすると日曜日の休日割増賃金は135%です。)
また、深夜割増は25%増ですので、それが時間外割増と重なり、法定時間外労働が月60時間を超えた時点で割増賃金は175%となります。働き方改革関連法による上限規制もあり、残業時間が月60時間を超える企業は大分減ってきたかと思いますが、運送業など従来から残業の多い業種は厳しい状況かと拝察します。労働コストに与える影響はかなり大きく、今後、早めに人員配置を含めた措置が必要です。
民法改正に伴う労基法改正で2020年4月以降に発生した賃金請求権の時効は従来の2年から5年(当分の間3年)に変更されています。今後割増賃金の支払洩れはリスクが増大していることにもご留意願います。